三行書付

大抵のことは三行でおk

この世界の片隅に

原作は未読だが、そこそこ予習してからの鑑賞
勢いで予約席を確保したはよいけれど、
どうも本作、自身の志向とはズレがあるような…

※以下、ネガティブ要素も多いので注意



尚、鑑賞時の上映回(月曜14時開始)の観客構成は

 高齢者 夫婦 約4組
  同  男性 約5名
  同  女性 約2名
 中 年 夫婦 約2組
  同  男性 約5名
 20代? 男性 約5名

といった感じ
キャパが約150人なのでガラガラですな
正直、色々と偏った客層ではある


良かったところ、腑に落ちたところ

1)主人公すずの笑顔が良い
  過酷な家事労働や人間関係の軋轢があっても
  いつも笑っている主人公が本作の救い

  朴訥で飾り気がないだけに、
  要所での決意の表情や化粧が驚くほど美しい
  髪を切るシーンも唐突だけど結構好き

2)ミリタリー的な描写が異常に凝っている
  特に爆発シーンに関しては前代未聞のレベル
  防空壕の中の揺れの作画と大音響は必体験

  取材に基づいた対空砲火の色付き爆煙とか
  特定の日に寄港した軍艦の種別とか
  変なところのコダワリに執念地味たものを感じた

3)死生観の描き方が独特で面白い
  主人公の兄に対する歪な感情・複雑な思いが
  兄の死後、妹に語る与太話に昇華する妙

  何度も九死に一生を得る人も居れば、
  呆気ないほど容易く死ぬ人も居る
  そのキャラ配置における取捨選択がある意味冷徹

4)世情や風俗の描写が当時を知る勉強にもなる
  三太九郎のプラカード持ちや遊郭の存在、
  兵器の知識を学ぶ町内集会など実に興味深い

  隣組制度や配給・闇市の仕組みや様子、
  クラシック音楽やアルファベットの使用など、
  細かなところのやり取りも面白い

5)絵の雰囲気に馴染んだ声の演技が素晴らしい
  棒でもなく、オペラでもなく、皆ナチュラ
  空気や水のような透明さで心底しっくりきた


さて、ではでは

悪かったところ、モヤモヤしたところ

1)全体の構成がおかしい
  純粋に原作ファン向けならコレでもよいのだろうが
  初見の一般客には話を読み取るのが難しそうな印象

  緩急のあるエピソードの連続で飽きさせない反面、
  同時に変な切り貼りの違和感が残り一寸惜しい感じ
  特にラストの急展開はその最たるものかと

  突然出てきた新キャラの孤児を家に住まわせて、
  EDのスタッフロールで止め絵エピローグとか、
  この流れはアニメ慣れしてない一般人には辛かろう

  実際、EDクレジットが出はじめた瞬間に
  気の短いご老体が3人くらい退室していったし、
  他の観客も上映終了後は頭に?が浮かんでいた様な…

2)広島弁が聞き取れない
  台詞が文字で読める媒体なら漢字で察しがつくが
  音声だけだと流石に分からない箇所が多々出てくる

  特に感情を爆発させて叫ぶような、
  ココ一番のシーンで台詞が曖昧にしか伝わらないと
  コチラの心にもスッと入ってこない訳で本当に勿体ない

  幸い、本作には聴覚障害者向けの字幕版があるので
  音声は雰囲気を感じ取るフレーバー程度に考えて、
  素直に字幕版を観た方が正解のように思う

3)キャラの見分けがつかない
  キャラデザの段階でホクロや髪型や目の形などで
  ある程度の区別はつくようになってはいる。

  ところが、いざ芝居をさせる段になると
  途端に誰が誰やら分からなくなるから実に厄介だった
  仕方なく、途中から声で聞き分けることにした

  なにせ主人公夫婦に至っては、
  町中や道端で「偶然」再会する場面も多く、
  しかも着帽で突然現れるので声で判断する他ないのだ

4)都合、2度も現れる人攫いのバケモノが謎すぎる
  子供の頃に籠に入れられた方は夢でいいとして、
  籠からピンクのワニが飛び出す方は一体何なのか

  ドキュメンタリータッチですらある本作にあって、
  純粋にファンタジー要素が炸裂するシーンは
  まさにこの怪人の件だけなので余計にしっくりこない

5)演出が過剰にくどい箇所がある
  義理の姪が爆死して主人公も右手を失い、
  モノクロのバチバチした夢を見るシーン長くね?

  あと、今迄に右手でしてきたことを
  畳み掛けるように延々と挙げていく場面も
  混乱している状態はよく分かるけど、やはり長い

6)エロシーンが念入りすぎて辟易する
  2度のキスシーンとNTR未遂の描写が割りとねちっこい
  あのキャラデザだと却って生々しいという謎発見もあったが

7)何故、物語の舞台が広島なのか
  広島=原爆≒戦争=話題性で煽っていくスタイル、の
  よくある図式かと思ったら、原作者が広島出身なのか

  とは言え、前述の通り、
  広島はヒロシマとして平和のシンボルと化しており、
  その名を出したが最後、反戦のレッテルを貼られる諸刃の剣

  でも、反戦って本作のメインテーマじゃないよね?

8)何故、主人公は右手を失うのか
  コレってマンガ家である原作者が考えた、
  一番失くしたくないものだから、なのか?

  作中では(言い方は悪いけど)姪に持って逝かれた訳で
  EDクレジットの最後に、この右手でバイバイする流れからも
  スピリチュアルなオカルト的扱いを受けているとも思える

  そう考えれば腑に落ちなくもないのかな

9)戦災孤児を引き取った理由
  主人公夫妻は何年も子宝に恵まれず寂しい思いをしていた、
  みたいな事情が長くあったのなら分かるが流石に不自然

  もしや、この辺りの動機や経緯は
  原作から大幅にカットされているのかな?

10)結局、この映画のテーマはなんなのか?
  恐らく、原作者や監督の発言を仔細に追っていけば
  正解の糸口は簡単に見付かりそうだから敢えてやらない

  今は勝手に想像で考えまするに
  コレはもう「おしん」なのではないかと

  この物語は、激動の戦前から戦後にかけて
  どんな苦難や困難にも前のめりに立ち向かい
  明るく朗らかに生き抜いた主人公すずの人生を
  余すところなくアニメ映画化したものである

  なのではないかと思う所存
  あ、スクールウォーズになってたわ


疲れたからココまで(おざなりな〆